こうくうへんぺいたいせん 口腔扁平苔癬 相談室
口腔扁平苔癬って何?どんな病気?治療法は?
そんなギモンに、口腔外科専門医が詳しく解説します。
口腔扁平苔癬とは
「口腔扁平苔癬」は、
口の中の粘膜に何らかの原因で異常が起きて、
口の中が白くなったり、
痛みやしみるといった症状が出る病気です。
症状は場所や病態によって様々で、
さらに自覚症状がない場合もあります。
主に中高年の女性に多くみられ、
発生率は0.1%~4%程度です。
遺伝的、免疫学的、金属によるアレルギー、
C型肝炎ウイルス感染、内分泌異常、ストレスなどが関係しているとされていますが、
実は原因は明確に分かっていません。
口腔扁平苔癬は癌化する可能性もあるため、
治療には専門医の指導のもと、
定期的な診察や口腔ケアが必要です。
症状がある場合は、早期に治療を受けましょう。
こんな症状、ありませんか?
- 頬粘膜や歯茎などに、白く変色がある
- 線状、網目状、レース状、
環状などの白い斑点がある - 赤くなっていてびらん(ただれ)がある
- 口内の荒れや刺激痛、灼熱感がある
どんな治療をするの?
現在の治療法は症状を和らげるための対症療法が中心で、一般的にはステロイド軟膏を病変部に塗布します。 その他にも金属アレルギーが考えられる場合には歯科用金属の除去、薬剤が誘因と思われる場合には薬剤の中止や変更が検討され、原因となりそうなものを除去して症状の改善を目指します。 また、口腔内環境を良好な状態に保つのも非常に大切です。不潔状態が続くと病態が悪化することもありますので、小まめな口腔ケアを心がけましょう。
新しい薬「セファランチン®」
現在、口腔扁平苔癬の新しい治療薬として、アレルギーを抑える効果がある「セファランチン®」という薬が注目されています。
日本では円形脱毛症などに使われている薬ですが、口腔扁平苔癬に対してはまだ国内での使用が認められていません。
まだ研究段階ではありますが、治療効果が期待されています。
口腔扁平苔癬と似ている病気
口腔扁平苔癬と症状は似ているけれど、
まったく違う病気もあります。
似た病気の中には癌化する可能性がある
病気もありますので、
専門医である口腔外科医に
検査や診断をしてもらうことが大切です。
症状が似ている病気の一例
-
口腔白板症
口腔粘膜、特に頬粘膜や舌、歯肉などに白色を呈する病変のひとつ。
-
口腔カンジダ症
Candida albicans(カンジダ アルビカンス)という真菌(カビの一種)により起こる口腔内の感染症。
-
口腔癌
お口の中のがん。
-
口内炎(アフタ、ヘルペス性)
口内炎とは口の中の粘膜に起こる炎症。
-
褥瘡性潰瘍
圧迫や摩擦などの機械的刺激が繰り返されることで生じる潰瘍。
-
天疱瘡・類天疱瘡
水泡、びらんができる後天性の自己免疫疾患。
-
全身疾患に伴う
口腔粘膜のトラブル先進性エリテマトーデス、梅毒、HIV/AIDSなどは、口腔粘膜に症状を引き起こすことがあります。
治療法の研究
奈良県立医科大学の口腔外科では、口腔扁平苔癬の治療法の研究をおこなっています。
現在、口腔扁平苔癬の根治的な治療法は存在していません。そのため、患者さんの症状に応じた対処療法が主体となります。しかし、私たちの研究チームは、新たな治療法の開発に向けて可能性を追求しています。その一つがセファランチン®という薬剤による治療で、セファランチン®には抗アレルギー作用などの効果があるとされています。
この研究では、参加者(口腔扁平苔癬患者さん)をセファランチン®を使用するグループと、使用しないグループの二つに分け、その後8週間の観察期間を経て、セファランチン®の効果と安全性について評価します。口腔扁平苔癬治療の新たな選択肢となることを期待しています。
Q&A
症状があらわれた時に感じる疑問や
不安にお答えいたします。
-
Q1
口腔扁平苔癬かもしれないと思ったらまずどうするべき?
ANSWER
まずはかかりつけの医院や歯科医院に相談することが推奨されます。
かかりつけの先生から口腔外科に紹介してもらい、専門医による検査や診断を受けることにより、口腔扁平苔癬の可能性や他の疾患の可能性を診断してもらいましょう。 -
Q2
口腔扁平苔癬は放っておいたらどうなるの?
ANSWER
口腔扁平苔癬は癌化する可能性があります。難治性の疾患のため、治ったとしても再発する可能性もあります。
そのため放っておかずに、専門医による適切な治療と定期的な経過観察を受けることを推奨します。 -
Q3
口腔内に白い斑点ができたら口腔扁平苔癬?
ANSWER
口の中に現れる白い斑点や炎症などは、口腔扁平苔癬の症状の一つではありますが、他の病気でも同様の症状が見られることがあります。そのため、口内に白い斑点が現れた場合は、専門医である口腔外科医に検査や診断をしてもらい、口腔扁平苔癬か他の疾患かを確認しましょう。
-
Q4
口腔扁平苔癬は他の人にうつる?
ANSWER
口腔扁平苔癬は、感染症ではなく自己免疫疾患の一種です。感染症のように感染源から他の人にうつることはありません。身体の免疫機能が異常に反応し、口腔内の細胞や組織を攻撃することで引き起こされます。
ただし、症状がある部位が傷つくと細菌や真菌などの微生物が感染する可能性があるので、口腔内の清潔さや口腔ケア、口腔清掃などの衛生管理には十分な注意が必要です。