類似する病気

口腔扁平苔癬と症状は似ているけれど、
まったく違う病気もあります。
似た病気の中には癌化する可能性がある病気も
ありますので、その違いについて見ていきましょう。

口腔白板症

口腔粘膜、特に頬粘膜や舌、歯肉などに白色を呈する病変のひとつで、こすっても剥離しないのが特徴の病気です。発生頻度は比較的高く、特に舌にできたものはがん化のリスクがあるので、前がん病変(※1)の代表的なものとされています。喫煙やアルコールによる刺激、合っていない義歯などによる慢性の機械的刺激、ビタミン不足(ビタミンAやBなど)、加齢、体質によるものが原因として考えられています。

症状

口腔粘膜に白色の病変が現れ、びらんや潰瘍ができることがあり、接触痛や食べ物がしみたりすることがあります。

治療

初期がんが疑われるしこりや潰瘍については、必ず組織生検術を行い、がん化する可能性のあるものは切除術を検討します。
治療にはビタミン投与や禁煙も有効ですが、がん化することがあるため長期間の観察が必要です。

Question &Answer

Q

口腔扁平苔癬と口腔白板症の違いは?

A

口腔扁平苔癬と口腔白板症は、似たような症状を引き起こすため、専門家でないと区別が難しい場合があります。
正しい診断のためには、口腔内の症状だけでなく、組織検査が必要な場合があります。
口腔内の症状がある場合には、口腔外科医や歯科医師に相談し、正しい診断と治療を受けることが大切です。
口腔扁平苔癬と口腔白板症の両方が口腔癌になる可能性があることが分かっていますが、口腔扁平苔癬の場合、
そのリスクは口腔白板症に比べて低いとされています。

口腔カンジダ症

おもに、Candida albicans(カンジダ アルビカンス)という真菌(カビの一種)により起こるお口の感染症です。口の中に常に存在するカンジダ菌は、通常は他の菌とのバランスが取れていて増殖しすぎないようになっています。しかし、副腎皮質ステロイド剤や抗がん剤、糖尿病、免疫力低下、唾液の減少、長期間の抗生物質服用などでバランスが崩れ、カンジダ菌が異常に増殖することで病気の症状が現れることがあります。

症状

急性型と慢性型があり、急性型では、口腔粘膜に白苔が粘膜表面付着した症状が現れます。白苔はガーゼなどで拭うと簡単にはがれ、はがれた箇所は赤くなったりびらんを呈します。白苔がなく、舌や粘膜が赤くなるカンジダ症は、ヒリヒリした痛みが強く出ます。慢性型の肥厚性カンジダ症では、白苔ははがれにくく、上皮の肥厚をともないます。

治療

口腔内の清掃を行い、抗真菌薬を含むうがい薬、塗り薬、貼り薬を使用して治療します。場合によっては、抗真菌薬の内服を行うこともあります。

口腔癌

口腔癌は、50歳以上の男性に多く、できる部位によって口唇がん、舌がん、口底がん、歯肉がん(上顎歯肉がん、下顎歯肉がん)、頬粘膜がん、硬口蓋がんなどに分けられます。その中でも舌がんが最も頻繁に発生し、口腔がんの40%を占めています。また、喫煙や飲酒、むし歯、義歯の不適合などが原因として考えられ、悪性の腫瘍は、進行が速く、潰瘍や腫瘤が速く大きくなり、周囲が硬く、他の部位に転移することが特徴です。

症状

症状は部位や進行度合いによってさまざまで、表面の特徴から白斑型、肉芽型、腫瘤型、びらん型、潰瘍型のように分類されます。これらの症状は、しこりや出血、痛みなどがあり、口の動きが制限されたり、リンパ節が腫れたりすることがあります。さらに進行すると、肺、骨、肝臓など他の臓器に転移し、全身的な症状をおこすようになります。

治療

がんが発生した部位や進行度合い、組織の特徴などを総合的に診断し、手術療法、放射線療法、化学療法の3つの方法を、単独または組み合わせて行います。頸部のリンパ節転移がある場合には頸部郭清術を行い、原発巣の切除範囲が大きい場合には再建術で他の部位からの組織を移植することもあります。

Question &Answer

Q

口腔扁平苔癬と口腔癌の違いは?

A

口腔扁平苔癬と口腔癌は見た目が似ていることがありますが、口腔扁平苔癬は口の中に白い斑点、赤み、潰瘍などを引き起こす炎症性疾患で、痛みを伴うこともあります。口腔癌の初期症状も似ていることがあるため、口の中に異常を感じた場合は、歯科医師や口腔外科医に相談して、適切な診断と治療を受ける必要があります。

口内炎(アフタ、ヘルペス性)

アフタ性口内炎
ヘルペス性口内炎

口内炎とは口の中の粘膜に起こる炎症のことで、栄養バランスの偏りやウイルス感染など、さまざまな原因により発症します。種類は大きく分けて2種類「アフタ性口内炎」と「ウイルス性口内炎」があり、極端な疲労やストレスによる免疫力の低下、栄養不足、遺伝性などいろいろな要素が絡み合って発症するといわれます。ウイルス性口内炎は、口の中だけではなく唇の外側や顔面に生じることがあります。

症状

アフタ性口内炎は、直径数ミリ大の円形の浅い潰瘍で、表面は灰白色~黄白色の偽膜で覆われ周囲は赤くなっています。食事や歯ブラシなどの刺激でも強い痛みが生じます。一方ウイルス性口内炎は、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルス、コクサッキーウイルスなどウイルスに応じて症状は異なりますが、発熱や倦怠感を感じたり、強い痛みを伴うことが多いです。

治療

アフタ性口内炎の場合は副腎皮質ステロイド薬含有の軟膏や錠剤、噴霧薬、うがい薬などが使われ、痛みやビタミン欠乏の場合には内服薬が処方されることもあります。通常は何もしなくても1~2週間で治ります。一方、ウイルス性口内炎の場合は、抗ウイルス薬を使用し、消炎鎮痛薬や抗菌薬を必要に応じて使用します。食事が困難な場合には、点滴やチューブで栄養を補給する必要があります。

褥瘡性潰瘍

褥瘡性潰瘍とは圧迫や摩擦などの機械的刺激が繰り返されることで生じる潰瘍のことで、舌縁、歯肉、頬粘膜でよく見られます。原因は鋭利な歯の辺縁(※2)、不適合な義歯、歯科矯正装置、歯ブラシの誤使用、咬傷や自咬傷、うつ病やパーキンソン病による不随意運動などによります。また乳幼児では、先天歯や萌出(※3)中の下顎乳中切歯の切縁が哺乳時に舌下面と摩擦することで、潰瘍病変を生じることがあります(Riga-Fede病)。

症状

粘膜の比較的浅い欠損で、赤色や灰白色を呈していることが多いです。
また、傷の周りに角質層が厚くなって白くなることもありますが、広がって硬くなる悪性腫瘍のような症状は見られません。

治療

原因となる刺激物を除去し治療することで、1~2週程度で消失します。長期化する場合には悪性腫瘍との鑑別のために生検を行うこともあります。一方乳幼児のRiga-Fede病の場合は、原因歯の除去か歯の鋭縁を研磨することで治療します。

天疱瘡、類天疱瘡

尋常性天疱瘡
類天疱瘡

天疱瘡と類天疱瘡はともに水泡、びらんができる後天性の自己免疫疾患で、類天疱瘡は高齢者に多く見られます。症状は歯肉、口唇、頬粘膜、口蓋粘膜などに広く発現します。天疱瘡は特定疾患に認定されていますが、類天疱瘡は認定されていません。

症状

粘膜面に増悪と軽快を繰り返す水泡性病変が生じ、しばしば後に瘢痕(※4)形成や障害を生じる傾向があります。
内蔵の病気と関係があるので、その検査を受けることが勧められています。

治療

副腎皮質ステロイドホルモン(ステロイド)内服が治療の中心になります。限局性および軽症例では、ステロイド外用のみでコントロール可能なこともありますが、重症例には免疫抑制薬の全身投与が必要になる場合があります。基本的な治療法は天疱瘡・類天疱瘡ともに同じですが、薬剤の量など症例により異なるため、正しく診断を受けることが大切です。

全身疾患に伴う
口腔粘膜のトラブル

先進性エリテマトーデス、梅毒、HIV/AIDSなどは、口腔粘膜に症状を引き起こすことがあります。

※1:正常なものに比べがんが発生しやすい状態に変化したもの

※2:前歯の先端のこと

※3:読み方は「ほうしゅつ」。歯がはえること

※4:読み方は「はんこん」。傷跡のこと